この映画で英語を究める!! 小さな世界と大きな英語
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この映画で英語を究める!!
小さな世界と大きな英語
2007-10-26-Fri  CATEGORY: 「見せて」くれる映画!
ターミナル DTSスペシャル・エディション ターミナル DTSスペシャル・エディション
トム・ハンクス (2007/10/12)
角川エンタテインメント

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   映画とはやっぱり見せるもの!!   
   
   ターミナル (後編)
   Terminal
   

英語が理解できない人間が英語環境に放り込まれる、そしてその必死に生き抜こうとする適応能力を如何なく発揮し言語を身につけてゆく様は、常に迫害から逃れてきたユダヤ人の軌跡のようなものを感じさせます。スティーブン・スピルバーグの静かなるサバイバル・スピリットを感じさせてくれるさわやかな佳作です。

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■Scene4:今週の「覚えたい英語表現」■

  まるでスピルバーグ監督はこの映画を見て楽しみながら日本人に英語を学んでみようではないか、と提案しているような気さえしてくるダイアローグの数々は、実際半年分の英語クラスが作れるほど満載されています。ヴィクター・ナボルスキーの話す英語はまことにサバイバルのために使われるそれであり、日本人英語学習の権威からすれば「非文法的」な表現の集積だと一蹴されそうですが、学習価値は大変高いものなのです。
  
  まず、英語が正確に話せない人間の心理にズカリと入ってゆきながら、正しい表現はどのようなものなのかを追及できる機会を与えてくれます。サバイバルのための言語活動なので、むずかしい単語を扱ったダイアローグはありません。それから新しい言語を学びはじめてよく頻繁に起こることなのですが、自分の意図した表現と相手に伝わった表現が食い違ってしまう場合があります。この映画に限らず様々なジョークはこのコミュニケーションのずれからユーモアが作り出されているのです。
  
  さて、覚えたい表現はこのズレの可笑しさからひとつ。ビクターはアメリア(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)から食事に誘われますが、「ここを出て行けない、あなたと」とそのつもりはないのに断ってしまいます。アメリアに気まずい返事をしてしまったと気づくのもあとの祭りで、次に彼女と会ったときは自分から誘おうと決心します。偶然にもらった空港ロビー内装の仕事をこなし(このエピソードも映画ならではのノリで面白い!)お金を作ります。空港内の店でスーツを買い、アメリアを誘うための「台詞」の練習をします。化粧室の大きな鏡の前に立ち、
  
  「軽い食事でも、どう?」
  
と練習するのですが、これがちょっと間違った言い方になっているのです。店のショップウインドウ内にあるスーツに自分の体を反射させて、

  Amelia, would you like to get eat to bite?
  
と言います。この get eat to bite が間違っており、正しくは、

  Amelia, would you like to get something to eat?
 
か、または、

Amelia, would you like to get something for a bite?

になるべきところでしょう。eat と bite は両方一度に使わなくていいのですが、使いたくなる気持はわかりますね。このあと、ヴィクターは化粧室で

  eat to bite...eat to bite...
  
と繰り返し、ひっくり返して bite to eat を何度も繰り返すのです。最後には子供がよくやる

  bite to eat bite to eat bite to eat bite to eat bite to eat.....  

を早口で繰り返し、bite to eat なのか、eat to bite なのかがわからなくなる。

  今回は全文がやや長いので bite を生かし、よく会話にも使う

  Let's have a bite.
  
を覚えてみましょう。「軽く何か食べよう」といった感じの表現です。アメリアがヴィクターを誘った "grab some dinner" という表現も粋で、「サッと何か夕食でも食べよう」と忙しい人がよく使います。これも

Let's grab some dinner.

で覚えてみましょう。では、


    レッツァーブ 

    レッツァーブ 

    レッツァーブ 

    
    レッグラァー サンディ

    レッグラァー サンディ

    レッグラァー サンディ

ターミナル DTSスペシャル・エディション<2枚組> ターミナル DTSスペシャル・エディション<2枚組>
トム・ハンクス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ 他 (2006/01/27)
角川エンタテインメント

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■Scene5:今週の「ちょっと不満、字幕スーパー」■

   上に書いた bite to eat の訳が気になります。英語が不慣れなヴィクターという設定なので、その点をつかなければ可笑しさやユーモアはなかなか感じ取れません。字幕でこの「ずれ」を少しでもだせば、この映画の奥行きがわかって面白さを感じることができると思うのですが・・・。
   
   まず、bite to eat をそのまま訳すと、bite が動詞なら「食べるのに噛もう」になるし、名詞なら「食べる軽食でも?」という意味になりそうです。字幕はせっかく「軽い食事を どう」とあるので、「軽い」を「噛むい」とゴロであわせてみてはどうかと思うのです。eat to bite が bite to eat とひっくり返されるので、はじめは「軽い食事を」とやって、次に「噛むい食事を」に変化させれば、観客は敏感にわかると思うのです。
   
   それより残念だったのはヴィクターが荷物運送係りのエンリケに頼まれ、税関局のトーレス審査官から彼女の「個人情報」をとるシーンで、思いっきり笑うことができる台詞があるのです。前回でも紹介した
   
   "Officer Torres, have you been ever in the love?"

というヴィクターの質問にトーレス審査官は怒ってしまいます。「いったい誰があなたに頼んでこんな質問をよこしているの?」とヴィクターに問い詰めます。するとヴィクターは

   "A man of misery."
   
とさり気なく答えますが、これが "A man of mystery." の間違いであることは、観客にわかる筋となっているのですが、ここも misery と mystery の引っかかりが字幕には反映されておらず、ヴィクターが言葉を間違って使ったところの可笑しさはなくなり、かってにエンリケの男ぶりを裁量してしまった感が残ってしまいます。エンリケはヴィクターに

   "I am her man of mystery."
   
なんだと言います。字幕では「おれは"謎のカレシ""ミステリー・マン"だ」と引用符を二度も使って書かれたありました。ところが、トーレス審査官に言うヴィクターの "A man of misery." 字幕は「哀れな男だよ」になっていました。「謎のカレシ」も「ミステリー・マン」にも引っかからない。そしてトーレス審査官は misery は mystery の間違いなんでは?と聞き返すところは「哀れ?謎では?」となって辛うじて言葉同士の比較がありましたが、「哀れ」と「謎」ではあまりにもかけ離れすぎて面白みがわかりません。

  「謎」では misery の和訳に近いものが見つけにくいとなれば、「謎」か「哀れ」を変えるしか方法はありません。ちょっと遊んでみましょう。
  
  エンリケの伏線である "I am her man of mystery." を
  
  「ナゾの彼氏」
  
か、または、

  「奇特なるカレシ」
  
とやや拡張して、そのあとのヴィクターの台詞 "A man of misery" を

  「マゾの男だよ」
  
  「危篤の男だよ」
 
と字面で引っ掛けてみるか・・・。まだまだ遊べるところだと思うのです。

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トム・ハンクス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ 他 (2006/01/27)
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■Scene6:その他にもまだまだ・・・■

   ブロークン英語の面白さは他のシーンにも生かされています。不倫相手の男性と不和になり落ち込んでいるアメリアをヴィクターが慰めるシーンです。結婚しているその男性がいかにベッドで素晴らしかったか、朝のルームサービス時にクロスワード・パズルをしている彼がどんなに「近い存在」であったかを語るアメリアに、ヴィクターはこう問いかけます。
   
   This...man...has you. Why he need...puzzle?
   
字幕は「でもその男、君といてどうしてパズルなんか?」となっていました。これはまったく妥当な字幕だと思います。しかしながら、この puzzle には二つの意味が隠されているのです。ひとつは名詞として、

   Why would he need a crossword puzzle?
  (どうしてクロスワードパズルなんか必要なの?)

という字幕と同じ意味の英文があり、そしてもうひとつは過去分詞として

   Why does he need to be puzzled?  
(どうして君という人がありながら迷っているの?)
  
という英文になり、これを一気にヴィクターに言わせるため、あのブロークン英語が必要だったのです。need のあとに少しポーズがあるところが映画ファン泣かせですね。ちゃんと観客に考えさせてくれるのです。だから、非文法的だと一方的に侮れないのです。どうやらこの映画は新たな英文法の法則さえ感じさせてくれるほど、英文法を動かしてくれているのです。固定したものとして学習している日本人学習者にとり、この映画が一服の清涼剤となることを祈っています。
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